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個性を尊重しよう!自分らしさを大切にしましょう。
あるがままの自分で生きよう!
などと言ったものの…。
彼は性格が悪いなぁ。
彼女の人格は疑わしい。
あの人は、やばい!
なども、あり得るかもしれません。
互いに尊重すべき十人十色の個性や性格。
ですが、そのすべてを理解することなど出来ない永遠の謎…。
これを解明しようという探求は、古くからおこなわれてきました。
性格って何?
まず、下記のような三重構造となっていて、中心のコアに生まれ持った先天的な「気質」が存在し、その上に遺伝的な「性格」があり、その外側に環境的に作られた「パーソナリティ」が生じるというものが心理学の定説となっています。
つまり、元々生まれ持ったものに様々な経験が上書きされた結果、その人の「思考や行動」が現れているという事になります。
“カエルの子はカエル”という言葉もありますが、カエルの卵からはおたまじゃくしが生まれ、その後どのように育ち何を経験したのかで決まる、という訳です。
確かに、生物は遺伝子に逆らうことは出来ず、親子の類似性は否めないでしょう。
しかし、まったく同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でさえ、能力や好みやが違っているということもあります。
それは、成育歴や経験が大きく影響するが故であり、そこに夢や可能性があるのではないでしょうか。
頑張って努力すれば、世界一幸せな猫になれるかもしれないね。
僕は、犬界の頂点に立つぞ!
可能性は無限。
…そして、それを信じるも信じないも、やるもやらないも、結局は「個性」でしょうか。
5つの特性 ~ビッグファイブ
人間の心理的な個体差を識別するために、これまでに様々な方法が試みられてきましたが、最近では「ビッグ・ファイブ(Big Five,Five-Factor Model)」が有力視されています。
これは、今までの性格検査を統合して、特性を5つに分類したものです。
1、外向性: 対人関係や他者への関わりの積極性。
2、開放性: 知的関心や好奇心度。
3、協調性: 他者との調和、共感性。
4、誠実性: 職業への取り組み方、責任感。
5、神経症傾向: 感情や気持ちの不安定感。
このような心理検査を受ければ、ある程度自分がどのような性格かを知ることが出来るでしょう。
他にも様々なテストがありますので、それらを通じて何となく納得できるかも知れません。
「良し悪し」は、定義できない
問題は、予想もしなかった結果や、どれかのバランスがが平均を逸している時だと思います。
多少の凸凹があったとしてもお互い様の個性ですが、それが自分にとって辛かったり、他人にも苦しみや迷惑をかけてしまっているとしたら…。
あるいは、周囲にそういった問題人物がいて困っているとしたらどうでしょう。
以前、ある番組の企画で、こう聞かれました。
「腹黒い人の簡単な見分け方ってありますか?」
これは、とても曖昧過ぎる質問です。
「腹黒い」という形容詞ですが、そもそも、誰にとっても間違いなく絶対に「腹黒い」という事実があると仮定して、では、万人が納得できる「腹黒さ」とは何なのか。
それをどのように定義するのか。
誰に聞いてもきっと、千差万別の「腹黒い」という現象が語られます。
しかし、それはその人の主観に過ぎず、ある人からは「そんなの腹黒くもなんともない」とか、「そう思う方が間違ってる」などと言われるかも知れません。
それが「腹黒い」という言葉のぼんやり感なのです。
これは、性格を表現する「優しい」とか、「まじめ」とか、「明るい」とか「暗い」など、全てに言える事です。
また、曖昧な表現だからこそ、何となくその感覚を共有したような気持ちになれるので使い勝手が良いのでしょう。
あの人、すごく良い人だよね。
そうそう!ほんと良い人!
「良い人」とか「悪い人」って、一体何を表しているんでしょう?
そしてそれは、誰にとっても同じ感想でしょうか?
あの人、すごく良い人だよね。
え?実は腹黒いんだよ…。
日常会話ならこれで良いのですが、公共の放送でやる意味があるのかは、少し疑問です。
結局は好みが違うだけのこと。
性格を表現する言葉の多くは、このように主観的なものに過ぎません。
性格などというものは存在しない。 A・アドラー(心理学者)
「腹黒い」を定義する
かくして、「腹黒い:悪い」を誰もが納得するようにすればするほど、おのずと犯罪者や猟奇的なサイコパスになってしまいます。
つまり、「犯罪を犯す可能性がある人物を見分ける方法」と置き換えれば、回答することは出来るかも知れません。
心理の分野で答えるならば、パーソナリティ障害の中の反社会性パーソナリティ障害が当てはまります。
臨床では、このようにクライアントの人格や個性を判別するため、何らかの見立ては必要になりますが、診断するのは精神科医の仕事です。
我々はあくまでも、それらの可能性に留意しつつ見立てていきます。
実際は、ほとんどの方が未診療で来られますし、語られるのは、「私はいつも大人しいと言われて…、人付き合いが苦手なんです…」などというものです。
細部を聞いていくと、それが著しく逸脱して辛い思いをされていても、「自分の性格・個性」として認識されています。
「性格の相談」を援助する
残念ながら個性や性格の中身は、自分にとってプラスのものばかりではありません。
能力や容姿なども、決して理想通りに叶ってはいないものです。
逆にコンプレックスに感じて辛かったり、人から不快感を持たれたり嫌われてしまうような部分を抱えてしまうこともあるかも知れません。
そのように、考え方や行動に強い偏りが見られ、日常生活に支障をきたしているような場合は、パーソナリティ障害の疑いがもたれます。
以前は、「人格障害」と呼ばれたものですが、まるで人間性を否定しているかのような誤解を招くことから、現在では「パーソナリティ障害」の名称に変更されています。
A、B、Cの三つのカテゴリー、全部で10のパターンに分類されており、約10パーセントの人が何らかの分類に含まれると考えられています。
パーソナリティ障害とは
では、その特徴を見ていきたいと思います。
A群: 奇妙で風変わりな言動。不可思議。
1、妄想性パーソナリティ障害
・不信感。猜疑心。恨む。他人の行動を悪意と感じる。
そんなの嘘だ。どうせ騙そうとしてるくせに。絶対許さない!
人を疑って信じません。被害者意識も強く、ちょっとした行為さえ悪意だと思い込みます。そして、侮辱されたとか搾取されたと感じると怒りに転じ、相手を恨み続ける執念深さがあります。当然、人を信用することは出来ず、結果的に主導権を持つしかなくなります。
小児期に情緒的、身体的虐待の疑いがあるとされています。
それだけ、本物の誠意や、温かく永続的な善意に飢えていると言えるかも知れません。
2、シゾイドパーソナリティ障害
・他者や周囲に無関心。感情が希薄。
ばかばかしい…。そんなのどうでもいいや…。
表情も言動も、どこか無機質で冷めています。自分だけの世界に浸る傾向があり、他者を寄せ付けません。逆に、一面には豊かな感情を持っているとも言われます。
養育者の感情が冷たく、ネグレクトや不安定な人物だった疑いがもたれています。
自分だけの世界に浸るしかないのは、誰もそれを理解してくれない寂しさからだとも言えるでしょう。
3、統合失調型パーソナリティ障害
・人間関係が苦手。現実離れした風変わりな言動。
世界はミスを犯した。みんな、宇宙に操作されてるんだ。
目に見えない物や、いわゆる非現実的で霊的、儀式的、スピリチュアルな世界観を持っています。日常でも些細な出来事を偶然ではなく、メッセージや暗示だと考えたりします。
両親からの精神病性障害の遺伝が疑われています。
この感覚に没頭してしまうのは、一般的には理解できない繊細で鋭敏な感性ゆえだとも言えます。
B群: 感情が不安定で劇的。周囲を巻き込む。
4、反社会性パーソナリティ障害
・無責任。サイコパス傾向。道徳観や倫理観に欠け、問題行動を起こしやすい。
うるせーな!俺、知らねぇ。何とも思わない。
他人の権利を侵しても、自分の欲求を強く求めます。周囲を傷付けたり身勝手な言動を繰り返しますが、罪悪感や良心の呵責がありません。犯罪者の多くが、この障害を持っていると言われます。
破滅的な人格に見えますが、ルールや規則、世間の拘束や不自由さから必死で逃げようとしているような人達だと言えます。
5、境界性パーソナリティ障害
・孤独感。依存的。見捨てられ不安。感情の激しい豹変。
君しかいないんだよ…。お前は何も分かっちゃいないんだよ!
孤独を感じているので、人との結びつきに強く依存し、なりふり構わずな行動をします。そして、相手がそれに疲れたり避けたりすると一気に怒りに豹変します。
遺伝と養育者に対する愛着の不安定さが疑われています。
相手にされないという事が、いかに辛く悲しいことなのかを実感させる人たちだと思います。
6、演技性パーソナリティ障害
・注目されたいという強い欲求。関心や興味を持たれたい。
この傷は修羅場をくぐった勲章だ。地獄を何度も見たよ。
人の気を引くために、大げさで印象的な言動をします。ドラマチックな表現や、悲劇のヒロインを演じ、場の中心でいる事を求めます。女性では、肌の露出や性的な態度で異性を翻弄したり、流行や影響力がある人を妄信する傾向もあります。
人から関心を持ってもらえるという事が、どれだけ重要なものなのかを考えさせられる人たちです。
7、自己愛性パーソナリティ障害
・劣等感ゆえの自己顕示。共感力が乏しく傲慢。野心と他者批判。
俺は、スペシャルだ。凡人はみっともない。
劣等感の裏返しで、自分の能力を過大評価し、根拠なく特別な存在だと感じています。その分、配慮や共感性に欠け、称賛を求めます。他人を見下したような尊大な態度で接し、パワハラ加害者の経営者やリーダーに示される傾向だと言われます。
養育者が過度に批判的だったり、期待を強いたり、または甘やかしたりしていた可能性があるとされています。
少しでも大きく見せたいという裏側に、「等身大の自己像」を認められることの大切さを感じさせます。
C群: 不安感、恐怖感が強い。
8、回避性パーソナリティ障害
・否定、拒絶に過敏。恥、交流の拒絶。自己を低評価。
俺なんてダメ人間だ。誰にも会いたくない…。
人からの評価に過敏で、否定や批判されることを恐れます。そのため、人との交流を避け、自分の殻に閉じこもる傾向が見られます。
養育者からの拒絶や疎外感を感じていた疑いが持たれます。
人と人の温かい交流、「存在しても良い」という承認がいかに必要かを伝えてくれる方々です。
9、依存性パーソナリティ障害
・依存と服従。判断や決断を回避して人任せにする。
どうすればいいかわからないんだ…。僕の全てをあげるから決めてよ。
自立を恐れ、人に世話をしてもらうことに依存します。依存できる対象者へは、過度な服従や献身を見せ、判断や意思決定を委ね、傷付けられてさえもその人にしがみつこうと必死になります。
家族世代間の影響や、幼少時の否定的な体験が要因とされています。
「自分を信じ、決断しても良い」という自律心を育む意義を感じさせます。
10、強迫性パーソナリティ障害
・完璧主義。ルールや手順に固執。頑固。
それはこうしなければダメです。私がやります。
強迫的に規律やスケジュールに従って、完璧に物事を遂行しようとします。その秩序立ったコントロールを重視するがあまり、本来の目的やゴールを見失うこともあります。
完全主義で規律的だったりする家族内の影響があると言われます。
柔軟性や応用性、多少のミスを許容したりする度量の獲得の必要性を教えてくれます。
このように見ていくと、結構当てはまるケースがあるものです。
むしろ、あの人もこの人も…、もしかして?と感じてしまうかも知れません。
それくらい、世の中は「付き合いやすい人」ばかりではないという事です。
そして、残念ながら、あなた自身のことを「普通ではない」とか「問題がある」と思う人がいたとしても不思議ではないでしょう。
生まれ持った気質や遺伝要素は変えようがありませんが、意識的に行動を変えれば「人柄、人間性」は変化させることが出来ます。
「暗くて気難しい、嫌い」を、「朗らかで温かい、好き」へと変化させる“何か”は、きっとあります。
自力では辛いな…、と感じたときは、心理相談へ。
記事を書いた人 Wrote this article
Kondo
短期間で改善を起こす、ブリーフ・サイコセラピー派の心理師。 あらゆる問題の解決事例を持ち、超合理的に結果に導く。 臨床から産業、教育分野まで、幅広い実践経験を持つ。 専門家からの相談を受けるマスター・カウンセラーである。