不良少年との面接

 

「なんだよ!」

「別に話すことなんかねぇし」

 

 

“本物のワル”と意味付けられた少年

 

面接室に入ってくるなり、睨みを利かせて言い放つ少年。

まだ幼さはあるものの、金髪で細い眉、身長も170センチを超えており、身なりも派手派手しく、なかなかの迫力だった。

彼は、暴行に喧嘩、窃盗、その他ありとあらゆる「悪事」に手を染めたという不良少年で、いかがわしいグループにも関わっている本物のワルだという。

ご両親は、とっくに育児らしいことを放棄しており、高校は退学し、更生施設でも度々問題を起こしていた。

荒々しく浅く椅子に座ると、いきなり両足を机の上に乗せた。

その足はイラついているように小刻みに揺れ続けている。

 

『まるでギャング映画だ…、やはり、依頼を受けるのではなかった…』

彼の親類が、たまたま知人であったばかりに……、私の脳裏に後悔の二文字がよぎった。

 

行動に現れるメッセージとは

 

さて、このようなケースを担当する時に大切なことは、まずは「身を守ること」です。

…まぁ、それはどんな状況でも優先事項かも知れませんが。

 

実は、メッセージを見立てることがとても重要なのです。

メッセージとは、暗に示された伝言であり訴えていることです。

実際に発せられた言葉である、「なんだよ! 別に話すことなんかねぇし」というのは、表面的なものでしかありません。

これはメッセージの一部ではありますが、単なる習慣的な威嚇行為みたいなものだと思われます。

きっと初対面時や、面接官のような相手に対する常套手段なのでしょう。

ワイルドな雰囲気や言葉遣いなどの表面的な情報に翻弄されることなく、明確な事実だけを追います。

 

肝心なのは、約束の時間通りにやってきて、自らの足で面接室に入り、椅子に腰かけたという事実です。

彼は、「カウンセリングを受けることを、自分から行動に移した」のです。

あれだけの体格やパワーがあれば、大人が何人がかりでも抵抗することが出来たのにも関わらずです。

 

『話すことはない』……だったら、なぜこうして来たのか?

恐らく、これまで同様の態度で様々な相手に立ち向かって行ったのだと思います。

「うるせえ!」

「黙れ!」

「関係ねーだろ!」

そう叫びながら、相手を睨み、威嚇し、抵抗し続けてきた少年の姿が浮かびます。

それは、親だったり、先生だったり、周囲の大人だったり、面接官だったり…。

 

彼が投げかけてくるメッセージが分かりますか?

 

「俺を、認めてくれるの?」

「俺を、信じてくれるの?」

 

「俺を、見捨てないで…」

 

あくまでも仮説ですが、そんな風にも感じられる訳です。

そして、それらに枯渇した時に人間の心は荒れるということは認められています。

 

綺麗に染められた金髪

 

まずは、切り出しやすそうなところからでも構いません。

 

「君の足って、凄く長いね」

「髪の毛、綺麗に染まってるね」

 

分かりやすくそう見せてくれているので、ちゃんと伝えてみます。

そうやって、彼のこだわりに準じて相互作用(反応、コミュニケーション)を観察していきます。

そして、なるべくポジティブな反応を見せた部分を追いかけます。

「まぁな、ブリーチだよ!」

「マジで!オキシドールじゃないんだ」

「何だそれ!ふざけんな(笑)」

まずは、このように反応してくれることが大切です。

よく、「ラポール(信頼感)」が重要だと言われますが、それには臨機応変で時に奇抜な対策を用いる必要性もあります。

ただ単に、「受容、共感、傾聴」などで面接を行っていくだけでは、長期化したりドロップアウトにも繋がりかねません。

 

一方的な意味付けを俯瞰する

 

「不良」の定義とは?

「ワル」とは、具体的に何だろう?

「問題児」って一体何?

 

決め付けず、断定せず、より柔軟な視点で観察していきます。

そして、そう振る舞わざるを得ない背後にある「システム(仕組み)」にも注視します。

 

一体「何」が、彼をこうさせているのか?

しかし、システムとは犯人捜しや原因探しではありません。

 

「愛情の無い家庭だった」

「親が暴力的だった」

「母親がアルコール依存だった」

 

それらのネガティブな意味付けは、ほとんど解決策とはならず、結局何かや誰かのせいにしているにすぎません。

システム介入は、実際に彼を変えていける行動であり、何をすれば変化が起こせるか。その具体的でシンプルな働きかけであるべきです。

「不良でワル」と意味付けられた少年が、自分の能力や才能を如何なく発揮して活躍できる仕組み作りとでも言えるでしょうか。

 

「僕は君の味方だ」

「僕を信じてくれ」

「僕は君を見捨てない」

 

口で言うと、薄ら寒く偽善的だったりもしますが、知らず知らずのうちにそういったメッセージが伝わることは必要です。

それがあって初めて、少年に変化が訪れるからです。

 

ポジティブな面に光を

 

面接が重なるにつれ、彼との交流も楽しくなってきました。

 

「おっさん。今度、俺のバイク見してやんよ」

(髪を黒く染めて)「おめーの面子もあるだろーしな…」

 

そして、彼の先輩たちの中に、稀に社会的成功を収める人物もいるという事も分かりました。

彼自身も、どこかで憧れを抱いている様子も感じられます。

「変化しろ」などとは一言も言っていません。

 

「だったら、先輩(地元の元不良グループだった自動車修理工)に声かけてみっかな」

 

こちらからも、メッセージを伝え続けただけです。

「君には、類稀な才能があるようだ」

 

彼には行動力がありましたし、ブリーチで髪を綺麗に染める美意識が備わっていました。

もし、その能力を如何なく発揮できる職場に出会えれば、彼の塗装技術の高さはきっと評判になると思います。

 



 

 

※個人が特定できないよう配慮してあります。

 

 

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