「コミュ力」が無くて、人に馴染めない

私は、群れない。
自分が信じた生き方をするぞ。

我がなすことは我のみぞ知る  by坂本龍馬

 

このような言い分が潔くも思えるのですが、皆がみんなこうだと社会が混乱してしまいます。

特に、若さゆえ、協調性が無くて自分勝手なことを「孤高」だと勘違いすることだってあるでしょう。

「誰に理解されずとも、そうとしか生きられない人物こそが英傑なのだ」
「世の凡人の考えが及ぶものではない」

作家の司馬先生は、作品の中でそんな事を仰るんですよね…。
若い頃、結構影響受けました。

 

人は生まれ落ちてすぐに誰かとの交流が始まります。
家庭も、地域社会も、学校や職場も、つまるところこの世界は「人」であり、そして「人との交流」に尽きます。

一言で言えば人間関係です。

ユング、フロイトと共に心理学界の巨匠であるアドラーは、だからこそ「すべての悩みは対人関係である」と言っているわけです。

 



 

そして当然、それに悩む方のお話を随分と伺ってきました。

つまるところ、気が合わない、やりづらい(価値感が違う)人が周囲にいるということです。

「問題は自分にある」という場合でも、結局は相手がそれを受け入れてくれない、迷惑に思うだろうなどと決めつけていたりします。

相手へのそれぞれの意味付けは、

「傲慢」
「嘘つき」
「泥棒」
「変態」
「悪魔」 ……など。

 

自分自身の意味付けは、

「暗い」
「醜い」
「愚か」
「罪深い」
「障害者」 ……これも色々です。

良く、孤立した子が、

「誰も、自分の事は分かってくれない…」とか、「自分は、みんなと違う」とか言いますが、これと同様です。

「分かってくれない」と思い込み、「自分は特別だ」と、認識する。

ある文化人が、孤立する人間には「思い上がり」が潜んでいる、と言っていましたが、一理あると思います。

 

考えてみてください。

相手にも考えはありますし、あなたよりもずっと特徴的な人はいます。

「偏ってるよ」
「考え方がおかしい」
「誰も、そんな事言ってない」
「嫌なら出ていけ」

世間は悩める者に対して、結構冷たいものです。

そこで巷では、コミュニケーションがとても重要だという情報が散乱しています。

何となく納得します。

誰とでも上手くやっていければ…。
どんな人とも和気あいあい、親しくなることが出来れば…。
どんな場所にも溶け込んで、楽しむことが出来れば…。

学校でも会社でも地域社会でも、ストレスなく有意義に生活できるのに…。
モテモテで、収入もアップするのに…。

で、それって具体的に誰の事ですか?

それは理想です。

数十年生きてきて、そんな人を見たことは一度もありません。

だから諦めてください。

そうじゃないと言うのであれば、錯覚か、または、「私、また好かれちゃってるなー」「信頼されちゃってるなー」という、思い込みが激しく、場の空気に鈍感な人でしかありません。

コミュ力が高いと出世する…そんな根も葉もないことを信じたり求めたりしないでください。

データがあるという人がいますが、「コミュニケーション能力」なんて不確定な要素を、一体どうやって計測すると言うんでしょう。

良く言われるのが、「企業から求められる人材の要素は、ここ数年間、“コミュニケーション能力”がトップである」

これらに関しては、多くの学者が整合性に異論を唱え、疑問視しています。

それを知った時、思わず納得しました。

 

イメージとか印象の専門家を名乗る人や、コミュニケーションの講師達が陥ってしまうことが、

「あなたが、一番印象悪い」
「絶対友達になりたくないタイプ」

と思われてしまうことだと思います。

「私は、コミニケーションの専門家です」

この時点で、胡散臭く思う人だっています。

大体、誰からも好かれるという事が不自然です。
そんなことはミッキーマウスや動物園のパンダだって成し得ません。

一番好かれている人が、実は一番嫌われている人だったりもします。

「好感」「印象」なんていうものは、良いに越したことはありませんが所詮一過性の曖昧なものです。

それで昨今は、嫌われることを恐れず歯に衣着せぬ言動する人が支持されているのかも知れません。

「嫌われる勇気」はベストセラーですし、マスコミは平然と毒気付く有吉さんとか、マツコ・デラックスさんとか、ダウンタウン松本さんを重用します。

まず第一に、社交が好きな人や、集団に「馴染んでいる様な人」がいるだけだと知ってください。
彼らは、何らかの事情を抱えて「人と交流したい」と考えています。

寂しさだったり、自己顕示欲だったり、付き合い上の割り切りだったり、色々でしょう。

要するに、そうすることを望み、選んでいる人たちです。

これに善し悪しなどありません。

ただ、人は周囲に何らかの影響を与えます。

リラックスはリラックスを与えますし、怒りや不安はそれを伝播させます。
そして、ネガティブな雰囲気を放つ人は、一緒にいるだけで気分が悪くなったりもします。

「こういう場所、嫌いなんだよね…」
「こういう人、苦手だな…」
「どうせ自分なんか…、早く帰りたい…」
「………(沈黙が続く)」

こんな人が傍にいると、ちょっと迷惑です。

その場所が学校でも、会社でも、地域社会でも同じことです。
そこは、当然あなたのお気に入りの人だけで作られた場所ではないし、公衆の場だからです。

相手や自分を否定的に思ったりネガティブに感じるのは仕方なくても、決め付けるのは少し不自由です。

 

私自身、苦手なタイプがかなり多い方でしたし、自分の事も大嫌いでした。

自分の事は、とにかくコンプレックスの塊でしかありません。

「下らない自分が存在する、くだらない社会…」

まるで悲劇のヒロイン気取りの思春期病です。

ですから他人に対しても苦手意識が募り、未だに人見知りです。

特に嫌だったタイプが、

「態度や声が大きい人」
「攻撃的で、威圧的な人」
「人を見下してバカにする人」

他にもいろいろあるのですが、その分、人間関係では苦労しました。

どこにでもこういうタイプが存在するからです。

逃げても無駄だと理解して、まず、彼らの事情(背景)を探ろうと努力しました。

目的論(彼らが求めているもの)的には、

『注目されたい』
『人をコントロールしたい』
『人より優れていたい』

原因論(なぜこうなった)的には、

『気が小さいことを恥じている』
『親に構ってもらえない子供時代だった』
『貧しかった等の劣等感』

もちろん、仮説でしかありません。

ただ、もし自分にそんな過去や事情があったら、きっとこんな風にしてしまうんじゃないだろうかと思えたのです。

それを直接言葉にすると嫌われるかもしれませんが、配慮としては意味があると思います。

好意返報性という言葉がありますが、要するに人は、善を為されれば善として返したくなる、「善を行えば善が返ってくる」という心理法則です。

結局は、自分でどう動くかでしかないのですが、好意など到底無理そうだったので、ひとまず話だけでも聞いてみようという所から開始しました。

そして、それまでは出来るだけ距離を取っていた人たちに、恐る恐る歩み寄り話を聞いてみたりしたのです。

「ちょっと、お話を伺ってもよろしいですか?」
「なんで、そんな大きな会社に成長できたんですか?」
「そうなるまでに、どんな事を心掛けてこられましたか?」

そうやって、だんだんと親しくなってきて分かったことは、自分でもびっくりするぐらい仮説が当たっていたということでした。

誰でも、様々な事情を抱えていて、どうしようもなくそういう傾向になっているようです。

皆、頑張って、努力して成果を出して、何かを手に入れて、…それでも埋まらない部分を持っていたりします。

完璧はありませんし、誰だって穴だらけ…、皆、同じです。

そして、自分に良く似たタイプからは目を背けたくなる。

世界は、人は、自分の鏡なんです。

 

結論としては、

“コミュ力最上論”などは無視しても良い。

ネガティブな言動は周囲に迷惑と受け取られやすい。

誰でも語らない背景を持っているものだから、まずは理解できるように歩み寄ってみる(決め付けて避けたりしない)。

そんな感じでしょうか。

ちなみに、出会った中で最も態度が大きく横柄な人(IT経営者)とは、その後友人になりました。

「ひかるちゃん(私のあだ名)。男は群れて仲良しこよしやってたらお終いだね」
「最近は、どいつもこいつも頭の固いバカばっかりだよな」
「お前の仕事は薄気味悪いけど、今はそういう時代なんだろうな」

不躾な言動ですが、良く言えば裏表のない正直な御仁です。
道場とか部活で、年長者には敬語を躾けられた自分ですが、彼には不必要だと感じました。
馴れ馴れしさとは少し違う、こちらの懐に入ってくるような素敵な笑顔が特徴的だったのです。

「相変わらず口悪いよね」
「田舎者のくせに、自分を何様だと思ってんだよ」
「うるさいからちょっと黙ってて」

気兼ねせず、こんなことが言えるのも彼の人徳でしょう。

『…人は鏡』

どうしようもなく下らなく、馬鹿げていて、どうしようもなく素晴らしい世界。

これが矛盾せず、許せて、面白いと思える。

他人や不快を許せるという事は、同時に自分自身を許せるという事です。

 

彼とお酒を酌み交わしながら、しみじみ自分の心の傷を舐めていたことは、ここだけの秘密です。

 

 

 

 
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