恐怖症 ~それが恐いんです!

恐怖症 ~それが恐いんです!
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また、夏がやってきた…。

忌まわしく、大嫌いな夏…。

 

だって…、恐ろしい“アイツ”が現れる季節だから…。

 

 

セミが恐い!

 



 

恐怖症(フォビア・phobia)には様々な症状があり、およそ200種以上があると言われます。

そもそも、何かに恐怖を感じる事自体は至って普通の事ですが、日常生活に著しい支障を感じるようであれば別です。

 

臨床実験の結果、近年では投薬のほかに行動療法や認知行動療法(CBT)によって改善するというエビデンスが示されています。

 

多くの人が集まる場所が恐いという広場恐怖や対人恐怖、高所や閉所、雷や地震など特定の何かが苦手となる個別的恐怖など、非常にバリエーションに富むのですが、特に夏に多くなるのが、ゴキブリやセミが恐いというご相談です。

ゴキブリは何となく分かるような気がするかも知れませんが、セミに関しては不思議に感じられる方も多いのではないでしょうか。

 

当然、セミが人を襲ったり危害を加えることはありませんし、特別な異臭を放ったり病原菌をまき散らすこともありません。

しかし、ある人にとっては、なぜか訳もわからないほどの恐怖を感じさせる対象なのです。

そして、「具体的に、セミのどのような所が恐いのですか」と聞くと、似たような答えが返ってきます。

それは、セミの特徴的な鳴き声や形状そのものもさることながら、なぜか“死骸や瀕死の状態”に異様な恐怖を示されるのです。

 

現象を俯瞰する

 



 

カウンセリングなどで収集されたデータは、面接者のバイアスが入るので精度は低いとされています。

しかし、問題が起こっている人にとっては、「今、すぐに対処してほしい」という思いがあるでしょう。

 

ただし、気休めや当てずっぽうではない確証ある技術の中でも、短期療法やSA(システムズ・アプローチ)の改善率を支えるものは、“見立て”です。

 

心理的な諸問題は、決して偶発的に起こっているのではありません。

それを見通すためには、直線的な因果律ではなく、全体を俯瞰しつつ実際の行動を観察します。

見立てに必要なのは、経験もさることながら、“クライアントの価値観”に添っていることも大切です。

 

セミが恐いことを、「恥じている」のか。

冷静に「自己分析」しているのか。

誰かに「打ち明けている」のか。

仕方ないと「割り切っている」のか。

そして、この恐怖と今までどのように付き合ってきたのか。

 

そういった物事の捉え方や対処法こそ、その方の価値観です。

 

鳴(泣)き虫?儚い命?

 



 

どんなことがあれば、大の大人が、ちっぽけな虫一匹に病的な恐怖心を抱けるのか?

 

セミって何でしょう?

なぜ、“セミの死骸”が恐怖と関連付けられているのか?

セミとは、その人にとって一体何を意味するのか?

 

このような方々には、不思議とある共通点が見られます。

日々忙しく精一杯頑張っている人に限って、ある日突然この感覚に襲われるのです。

なぜか、日常生活は至って普通であり、労働意欲も高く役割などを担っている立派な方が多いのも特徴です。

 

それだけに、なぜこんなバカげたものに恐れを感じながら生活しなければならないのか…、と苦しまれます。

 

長い間土の中で眠り、孵化すると大音量の鳴き声で生命を謳歌し、そして、ひと夏だけの一生を終える…。

これは、ステレオタイプとしての見方の一つです。

 

「その儚い姿に、ご自身を投影させているのです」

「仕事に身が入らないという事実を、セミが恐いという理由によって隠蔽しているのでしょう」

 

「…確かに、そう言われればそんな気がしますが…」

 

これはこれで一理ありますが、ご本人は無自覚なのでそのような分析は無意味であり、「それは違います」などの抵抗を受けることにもなるでしょう。

このような視点は原因論なので、そのままではシステムを変化させる(改善させる)事は難しくなります。

 

大切な何かを利用する

 



 

否定的な意味付けをされるのは、誰だって嫌なものです。

そもそも、好きでなっている訳ではない、辛く苦しい「恐怖症」なのです。

 

ですから、介入には工夫が必要です。

 

「子供の頃、父とセミ取りにいった記憶があります」

「昔は、むしろ夏の風物詩くらいに思っていたんです」

「バルタン星人のモチーフだなって思ってました」

 

このようなストーリーに、重要なポイントがあります。

 

物事の根拠や真実を白日の下に晒すのは、科学者や司法の仕事です。

心理援助では、違う方法を取るべきだと思われます。

相談者が“大切にしているもの”があるのならば、積極的に利用するのが短期改善におけるユーティライゼーション(utilization)という考え方です。

 

バルタン星人療法

 

「…という訳で、夏になると憂鬱になるんですが、何か良い方法はありませんか」

「わかりました。では、近いうちにバルタン星人の人形かフィギュアのようなものを手に入れて下さい。そして、次のお休みの際、必ずそれを持ってある場所に行って頂きたいんです」

「え?どうしてですか?」

「実は、セミというのは、実に巧妙な周波数を出す生物でして…。それをキャッチできるごく一部の人に畏怖心が芽生えやすいのです」

「まさか?そんな話、聞いたことがないです」

「皆さん、そうおっしゃいます。これは無意識の感覚なので、自覚することも世間一般的に周知されているものでもありません。セミ恐怖症の方の中でも、ごくわずか数パーセントの方にだけ感じ取られるとても稀なものなんです」

「そんな…。冗談はやめてください」

「では……、この先はお伝えしない方がよろしいですかね…」

「いやいや。気になるじゃないですか。そこまで言ったなら、聞きたいですよ」

「…わかりました。では、一度しか言いませんので、よく聞いておいてください…」

 

一例ですが、相手から入手した情報を利用し、関心を寄せてもらい、課題の実行へと繋げる。

 

ここにあるのは、クライアントさんにとって有益であるならば、“使えるものは何でも使う”という目的意識です。

 

もちろん、何を、どこで、どんな時に、どうするのか。それを緻密に組み立てる必要があります。

それを形作るのも、結局は「見立て」ありきです。

 

恐怖という感情は一転させることが出来ますし、この経験を通じて手に入れられるものがあります。

心はいつでも、自分自身をより良く生きさせることに従順なものです。

 

「認知の歪み」を修正する認知行動療法。

「ドミナント・ストーリーを、オルタナティブ・ストーリーに書き換える」ナラティブ・セラピー。

「無意識に働きかける」催眠療法。

「受け入れて共感する」来談者中心療法。

 

そして、

「改善の戦略を作り上げる」短期療法。

 

恐いものが何もないという人は、危険を察知したり回避することが出来ず、問題ばかりの毎日を送ることになります。

怖れを知る人は、用心深く用意周到に熟慮を重ね、結果的に安定や成功していたりするものです。

 

せっかくの開放的な季節です。

恐怖を手放し、自由に過ごすお手伝いをさせて頂きます。

 

 

「世におそろしいのは、勇者ではなく、臆病者だ」 徳川家康

 

 

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