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正しそうだし、きっとそうなるんじゃないか?
良かれと思って、上手くいくと信じてやったことが、全く逆の結果になってしまうことがあります。
皆さんも、ご経験がないでしょうか?
子供のためにと熱心に育てたのに、親に反抗ばかりして不登校になった。
幸せになれると思って選んだ人と結婚したのに、価値観が合わずに喧嘩ばかりの生活になった。
良い社会人となって頑張ろうと入った会社で、パワハラに遭い、うつ病になった。
元気になれると信じてカウンセリングやセラピーを受けたのに、逆に苦しくなった…。
努力が報われない…。
短期療法では、こういった場合、「上手くいかなかったのなら、別のことを試そう」という考え方をします。
しかし、一般的には「別のこと」という選択肢は、案外上手くいかなかったことと近いものになりがちです。
ダイエットのためにマッスル・キャンプのDVDを購入したものの、きつ過ぎて続かなかった…。
今度こそはと、楽々ブルブル・マシーンを購入したが、振動が大きくて使いづらかった…。
こういった現象です。
ネタ元が、「TVショッピング」という共通点だったからかもしれませんが、このように着眼点というのはさほど変化しないことが多いのです。
構造を見込んだ、真逆の視点
パラドックスは、真逆ともいえる視点が特徴です。
「別のこと」といっても、決して当てずっぽうではなく、構造をきちんと理解しなければなりません。
では、分かりやすい例でご説明します。
ある日、一本の電話が鳴りました。
「あの、そちらはカウンセリングの場所で間違いないですか?」
「ええ。はい、そうです」
「私は、〇〇と言います。そちらで悩みを聞いていただけないかと…」
話始めたその時です。
「あ!間違えました」
「はい?どうされました?」
「えっと、順番が違いました。あの、そちらはふじまるさんで、相談を受けている所ですね」
「はい。そうです」
「私は、悩んでいることがあるので、それを是非ご相談させて頂いて…、その…、ああっ!」
「どうされましたか?」
「すみません。ちょっと最初から説明します」
「はい。どうぞ」
「ええっと、私には現在悩んでいることが…、それは…、あっ!そうじゃなかった!」
「……大丈夫ですよ」
ご予約時から、このように話し出しては、つっかえて、また最初から話されるというループを描いていらっしゃいました。
そして、ご予約日当日、ご相談内容を話し出されるとやはり同じくつっかえて最初に戻るというループが繰り返えされたのです。
こういった場合、「緊張しているのではないか」とか、「説明する順番にこだわりがあるのだろう」とか、様々な憶測ができ、対応としては「大丈夫ですよ」とか、「いいですよ」などの受容的に受けることになりがちではないかと思います。
受容共感を重視する流派では、「これが、この人のあるがままなのだ」ということで、特に変化を起こそうなどとはしないでしょう。
「最初からやります」と、つっかえるたびに、「大丈夫です。どうぞ」という対応です。
慌てさせないように、否定しないように、相手を尊重して受け入れようという態度を取るわけです。
しかし、良かれと思っての対応ですが、このループは延々と繰り返されてしまいます。
そうなると、相談内容の核心に迫れないまま、ずっとこの様子を見守ることとなります。(もう、核心は見えていますが…)
一瞬で循環を止める、パラドックス(逆説)介入
パラドックス介入では、受容では無理だと認めた途端、大胆にも真逆の視点で介入するのです。
「あ!間違えました!最初から説明します」
「……(相手を凝視)」
「私は、今日相談したいことがあり…」
「あれ?今、間違えましたよ」
「…は?まだ間違えていません」
「いや、順番が最初と同じです。最初からお願いします」
「いいえ。ここまでは、これでいいんです」
「そうですか?では、もう一度お願いします」
「…いいえ。…もう平気です」
「それで、今日のご相談内容は?」
「…もう、大丈夫です」
嘘のように、一瞬でこのループは止まりました。
分かりやすい、パラドックス介入の一例です。
押してもだめなら引いてみな。
あれこれ試しても成果が出なければ、専門家に相談する。
いいえ。 もっとあれこれ試してからにしましょう。
…さあ、ではもう一度。
記事を書いた人 Wrote this article
Kondo
短期間で改善を起こす、ブリーフ・サイコセラピー派の心理師。 あらゆる問題の解決事例を持ち、超合理的に結果に導く。 臨床から産業、教育分野まで、幅広い実践経験を持つ。 専門家からの相談を受けるマスター・カウンセラーである。