こころの病気 ~精神疾患について

こころの病気 ~精神疾患について
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こころの調子が良くない。

気分や情緒に乱れがある。

精神的に苦しい。

メンタルが不調だ。

頭がおかしくなってる。

考えに病的な偏りがある。

様々な言い方がありますが、心の問題や状態、ありようなどを症状として見ていくとき、精神医学における精神疾患・障害の理解が必要です。

精神疾患を有する総患者数は、約419.3万人で、そのうち約30.2万人が入院しています。これは、国民の30人に1人が罹患している割合で、5人に1人は、生涯のうちに何らかの精神疾患にかかると言われています。

疾病別にみると、特に認知症(アルツハイマー病)が15 年前と比べ約7.3倍。2025年には、高齢者の5人に1人が認知症になると予測されます。続いて、気分障害(躁うつを含む)が約1.8 倍、神経症性障害(恐怖症、不安症、解離症、身体症、ストレス性障害を含む)が約1.7倍と増加率が高くなっています。

厚生労働省、精神疾患の推移

病名は何によって決まるのか

現在、この分野で世界の主流となっているのは、

DSM-5 APA(アメリカ精神医学会)による精神障害の診断と統計マニュアル



ICD-10 WHO(世界保健機関)による国際疾病分類



の2つで、5とか10の数字は、第5版というような意味合いで改訂の度に付けられる数です。

WHO加盟国である日本の厚生労働省の冊子やHPなどではICDが用いられており、あらゆる疾病全体を網羅するICDに比べ、DSMは精神医学に特化されており、特に心理学領域ではDSMでの基準が重視されていると思います。

医療分野において、心の病気の治療は問診、検査を経て、主に投薬やカウンセリング、心理療法や何らかの治療法という流れを取ります。

その診断と治療は、精神科や心療内科の医師に限られます。

精神疾患、障害の種類



では、それぞれの病名となる特徴と診断基準はどのようなものか概略を見ていきます。

気分障害

うつ病
思考停止(思考制止)。頭の中が空で、考えが何も浮かばない。
三大妄想が特徴。
罪業妄想(自分がしたことは罪深い)
心気妄想(重大な病気にかかっている)
貧困妄想(金欠になり、生活が破綻する)

DSM₋5による大うつ病性障害は、下記の1、2いずれかを含む5つが2週間以上続く。
1.抑うつ気分
2.興味・喜びの著しい減退
3.食欲減退や体重減少(食欲増加や過食)
4.不眠(過眠)
5.精神運動焦燥、または精神運動制止
6.気分減退や疲労性
7.自己の自己の無価値感や罪責感
8.思考力、集中力の減退、決断困難
9.自殺念慮、死についての反復思考

10代半ばから30代までに発症する事が多く、長期化、再発リスクや自死率も高い。

双極性障害(バイポーラー)
観念奔逸。とめどなく考えが溢れ出て、目的や方向性を見失う。
通常は10代から30代までに発症し、自死率は一般の15倍。

産後うつ病
産後2~3週間から3か月以内に、気分が落ち込み、自責感などが2週間以上持続。罹患率は10%。
1~2週間で収まれば、マタニティブルーズ。

統合失調症

連合弛緩。思考が支離滅裂になり、話す内容は意味不明で理解できない。
幻覚と妄想が特徴。
誰かに監視されている。盗撮や盗聴、尾行されている。噂話が聞こえる。考えが他人に漏れている。何者かに狙われている。

不安症

分離不安障害 母親などの愛着対象との分離に対して恐怖を抱く。
選択性緘黙 学校や人前など特定の場所で話せなくなる。
限局性恐怖症 高所、閉所、暗所、虫などを恐がる。
社交不安障害 人前や会食などで緊張する。
パニック障害 きっけかけも無く、突然パニック発作を繰り返す。
広場恐怖 電車や人混みなど、すぐに逃げられない状況を恐がる。
全般性不安障害 様々な事に対して不安感を持つ。

強迫障害、および関連障害群

強迫性障害 手洗い、施錠、確認などが反復される。
醜形恐怖 容姿が醜いという観念にとらわれる。
ため込み症 物が捨てられず、溢れかえる。
抜毛症 自分で頭髪を抜いてしまう。

身体症状症、および関連障害群

身体症状症 身体症状のあるなしに関わらず、原因不明の愁訴を訴え続ける。
病気不安症 病気になることの恐怖が6か月以上続く。
変換症、転換性障害 説明のつかない運動や感覚の異常。
作為症、虚偽性障害:ミュンヒハウゼン症候群 周囲の関心を引くために病気だと偽る。

解離症

解離性同一症:多重人格
強いストレスから逃れるため、意識を遠ざけて防衛する。人格が複数に交代し、その時の記憶は無い。

解離性健忘
心的外傷やストレスによって、健忘して思い出せない。

離人感、現実感消失症
強いストレスによって、現実感が失われる。

イマジナリーコンパニオン(フレンド)
空想や幻覚の友人や仲間と持続的に関わる。

ストレス性障害

心的外傷後ストレス障害(PTSD)
事故や災害、暴力などの強いトラウマ体験後、フラッシュバックや自責、不快感情が1か月以上続く。

急性ストレス障害(ASD)
強いストレス体験後、1か月以内に留まるフラッシュバックや不快感情。

反応性愛着障害(反応アタッチメント障害)
世話をしてくれる人に警戒的で、素直に甘えられず、優しく接しても抵抗や怒りを示すなど矛盾した行動をとる。

適応障害
ストレスによって日常生活の困難が生じ、感情、行動面の症状が出る。

摂食障害

神経性やせ症、神経性無食欲症:拒食症
BMI(身長と体重で算出する体格指数)18.5以下が目安となり、肥満恐怖、瘦せ願望、身体像障害などがある。

過食・排出型
過食後に自己誘発性嘔吐や下剤乱用を繰り返す。

摂食制限型
食べずにいて、過食や嘔吐はない。

神経性過食症、神経性大食症
過食があり、嘔吐等の代償行為があるが、るい痩はない。

過食性障害
空腹を満たすためではなく、限界を越え嫌気がさすまで過食する。

回避・制限性食物摂取症
食事に無関心、食べる不快感などからるい痩に至る。

依存症

アルコール使用症害
強い飲酒欲求があり、大量、長時間に及ぶなど、日常や仕事に支障をきたす。

ギャンブル依存
興奮を得るためにギャンブルにのめり込み、 生活や経済的に支障をきたす。

薬物依存
覚せい剤(メタンフェタミン、アンフェタミン)、MDMA、大麻、アヘン、ヘロイン、コカインなどによって生じる依存症。
患者が違法薬物を使用していても、医療者に警察への通報を義務付けた法令は存在ぜず、守秘義務が優先され治療が行われる。

窃盗症:クレプトマニア
利益のためでなく、興奮や充足感を味わうために万引きなどを繰り返す。

睡眠障害

不眠症 眠れない、目覚めてしまう、日中の眠気がある。

睡眠時無呼吸症候群:SAS
睡眠中10秒以上の無呼吸状態が繰り返される。

ナルコレプシー
日中に突発的に眠り込んでしまう。感情の高ぶりによって情動脱力発作(カタプレキシー)、睡眠麻痺(金縛り)、入眠時幻覚。

せん妄

注意、認知、集中力が早急に低下する障害。時間によって変動する。

パーソナリティ障害

考え方や行動に偏りがあり、日常生活に著しい障害が出る。

妄想性パーソナリティ障害
シゾイドパーソナリティ障害
統合失調型パーソナリティ障害
反社会性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害
演技性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害
回避性パーソナリティ障害
依存性パーソナリティ障害
強迫性パーソナリティ障害


詳しくはこちら。

発達障害:神経発達障害

社会性の欠如、不注意や落ち着きの無さ。コミュニケーションに欠陥がある。

注意欠如・多動症(ADHD)
自閉スペクトラム症(ASD)
学習障害(LD)


詳しくはこちら。

知的能力障害
18歳までの発達期に発症。社会的、実用的な活動において知的機能と適応機能両面の欠陥がある。
継続的な支援を要し、社会適応、コミュニケーション、社会参加、自立生活などが困難。



詳しくはこちら。

認知症

記憶、思考、判断、学習能力などの精神機能が、ゆっくりと低下していく。

アルツハイマー型 物忘れ。記憶障害。認知症の高齢者の約60~80%に発症。

レビー小体型 幻視。統合失調症に見られるカプグラ症候群(知人を別人やすり替わっていると思う)など。パーキンソンニズム(歩行困難、筋肉のこわばり)。

脳血管性 高次脳機能障害。脳卒中などによる脳組織への血液供給が減少または途絶し、脳組織が破壊される。

前頭側頭型:ピック病 人格と行動が無秩序になる。常同行動。

正常圧水頭症 バランス感覚の異常。歩行障害。尿失禁。

性同一性障害:性別違和、性別不合

長期間持続する異性への強い同一化。出生時に割り当てられた性とは異なる性別として生きたいと望み、不安、抑うつ、いらだちなどの苦痛を伴う。

トランスジェンダーのような性自認やLGBTQの性的指向とイコールではない。

これらの方と面談する場合、診断と治療、支援に関しては医師が中心となって連携を取る「チーム医療」が求められます。

情緒や心理面などの対応を外部の心理師やカウンセラーに依頼する場合は、必ず主治医の指示に従ってください。

改善事例を見立てる



短期療法の視点は、精神疾患であっても、あるいは予備軍や過去に病歴があっても、それを乗り越えて安定的に生活している事例を集める事です。

精神疾患に限らず、決して病気=不幸ではありません。

何があっても諦めず、何とか共生できている人もいます。

また、ポイントとして、そこに努力や思いやりといった精神論ではない具体的な行動として観察できるものを探します。

いつ、どこで、誰と、誰が、何をしたのか。

これは、曖昧ではなくはっきりと観察できます。

そこに共通点や類似点は無いか。

何らかの法則性や因果関係が見出せないか。

物事には、必ず原因と結果があります。

ただし、当事者にそれを理解させなくても、無理に押し付けなくても良い場合もあります。

突き詰めても意味不明だったり、何が功を奏したのかも分からないケースもあります。

だから、経験や知識に基づく「見立て(観察して予測する)」が必要になります。

ただ「解決」にのみ焦点を当てる。

それが短期療法、ブリーフ・サイコセラピーです。

症状や苦痛を改善、解決に導くということであれば、心理相談へ。

記事を書いた人 Wrote this article

Kondo

短期間で改善を起こす、ブリーフ・サイコセラピー派の心理師。 あらゆる問題の解決事例を持ち、超合理的に結果に導く。 臨床から産業、教育分野まで、幅広い実践経験を持つ。 専門家からの相談を受けるマスター・カウンセラーである。

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