この記事は約 6
分で読めます
子供の頃、近所の建設現場近くで遊んでいると、大工さんが材木の端材をくれました。
それを手にすると、木の香りとずっしりとした重み、そして温もりがありました。
表面も滑らかに研磨されて面取りもされており、おそらく、その時初めて製材された木の美しさに触れたのです。
黄褐色の木肌、流れるような木目、すべすべとした肌触り。
私はそれを宝物のように家に持ち帰り、しばらく机に飾っていました。
「なんて奇麗なんだろう…」
いつもそこを通るので、山積みされた端材の中から今度は少し長めの板をもらいました。
今思えば、それは当時流行りだしていた2×材で、その後、ホームセンターなどでもよく見かけるようになったものです。
その木を使って何かを作りたいと考え、コの字型の小さなベンチを作ることにしました。
まずは図面を描き、サイズを測って線を引いて鋸で切ります。
しかし、切るだけでも大変で、どうしても真っすぐにならずに引っかかったりして歪んでしまいます。
また、断面がざらついていて、そのままでは使えません。
家の道具箱からカンナやノミを見つけ出して何とかきれいにバリを削り、太い釘で張り合わせただけの単純なものですが、出来上がってみるとなかなか頑丈そうでした。
それはなんと今でも現役で、椅子としてだけでなく、高い場所に荷物を出し入れするときなど意外に重宝しているのです。
それ以降も、何かを作ることが盛んになり、DIYが趣味の一つになりました。
道具類も、今ではほとんどのものが揃っているにも関わらず、ついつい休日にはホームセンターに足を延ばしてあこれ物色してしまいます。
道具には「素人の趣味用」と、「職人のプロ用」が存在します。
性能や耐久性にが圧倒的な違いがあり、大きさや重さ、金額も桁違いです。
そもそも使いこなせませんが、プロスペック品はかっこよくてしばし眺めてしまいます。
それは使い勝手や性能を極めた「機能美」があるからです。
そして、それを自由自在に扱って、何かを創り出すのがプロフェッショナルたちなのです。
職人のレベルは、その手や道具類を見れば一目瞭然だと言われます。
私はこれにプラスして、配慮、つまり観察力を挙げたいと思います。
現場に限らず、状況やタイミング、そこからの予測、そして判断と行動。
それはどうしても経験の差になると思います。
これを瞬時に見立てて実行に移せるのが本物だと考えています。
どの世界にも、プロがいます。
私のクライアントに、ある業界でその地域ナンバーワンの専門家さんがいます。
ヨーロッパの一流アーティストの元で修業をし、地元で起業していらっしゃるのですが、お話を伺っているとコンサルティングをしているこちら側が学ぶことが多く、とても勉強になります。
彼との出会いは数百名が集まっている研修会だったのですが、その中でも一際目を引く存在でした。
長身で長髪、全身をハイセンスな衣装で包み、まるでモデルかロックスターのようでした。
にっこりと笑顔で握手を求められると、とても良い香りがしました。
失礼にも、華やかなオーラに圧倒されて思わず頭に浮かんだ言葉が出てしまいました。
「あ…!マーシーみたいですね…」
マーシーというのは、80年代の日本のハードロックバンド、「アースシェイカー」のリードボーカルであり、私のアイドルだった人物です。
このジャケットに写っている白いギターが初めて買ったエレキでしたし、名曲「モア」は、高校の文化祭で演奏した思い出の曲です。
もちろん、マニアックすぎて「?(キョトン)」とされるに決まっているだろうと思いました。
しかし、なんと彼の口から出た言葉は…。
「あーーっ!うれしい!」
だったのです。
「近藤さん、マーシー知ってるんですね!いやー、うれしいなー!実は僕もロック好きなんですよ!」
私もうれしかったことは言うまでもありません。
そして、彼の奥様にもお会いする機会があったりと、長きにわたってお付き合いさせていただくことになりました。
彼の腕は地域一番というだけでなく、次々と店舗を広げ、サービス領域も広がっています。
そんな彼は言います。
「我々には、お客様のニーズを越えて実現させるという使命があるんです」
そして、海外で行われる業界最大のイベントさえ、今では彼の仕事場となっています。
尊敬する彼の言葉を借りるならば、
顧客ニーズを叶えられる職人は 2流。
顧客ニーズを越えられる職人は 1流。
そして、
顧客ニーズを遥かに越えられる職人は、 超一流。
職人魂、これにあり。
記事を書いた人 Wrote this article
Kondo
短期間で改善を起こす、ブリーフ・サイコセラピー派の心理師。 あらゆる問題の解決事例を持ち、超合理的に結果に導く。 臨床から産業、教育分野まで、幅広い実践経験を持つ。 専門家からの相談を受けるマスター・カウンセラーである。