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はたらけど はたらけど猶わが生活楽にならざり ぢつと手を見る 石川啄木
サービス残業。時間外労働。ワーキングプア。
パワハラ、モラハラ、セクハラ。
リストラ。不当解雇。失業。
ブラック企業。コロナ倒産。
労働者を取り巻く環境は、今後どうなっていくでしょうか。
案外、明るい未来が待っているかも知れないですが、問題がある場合は対処法が求められます。
労働の義務…と権利
働くことは国民の義務だと法で定められています。そして、この義務をきちんと果たせば“権利”が与えられるのです。
それが、第二次世界大戦後に制定された「労働三法」です。
労働三法について
①労働基準法
労働の最低基準を定めた法律。
原則1日8時間、週40時間。これを越える時間外、休日労働は原則禁止。
ただし、労働基準監督署に36協定(労使協定)を提出すれば例外が認められる。上限は、月45時間。年360時間。
臨時的な事情がある場合は、年720時間以内。複数月、平均80時間以内(休日労働含む)。月100時間未満。
②労働組合法
労働者の立場を向上させ、権利を保障。労働三権と呼ばれる。
1、団結権 …団結し、組合を作る権利。
2、団体交渉権 …組合が、労働条件に付いて交渉できる権利。
3、争議権(団体行動権) …労働者の求めがあれば、争議・ストライキなどを行う権利。
③労働関係調整法
労働関係の公正な調整と、紛争の予防と解決。
労働安全衛生法
職場における労働者の安全と健康の確保。快適な職場環境の形成と促進。労働者50人以上で、安全や衛生の管理者を選任し、衛生委員会の設置と産業医の選任、ストレスチェックの実施が義務付けられる。
過労死防止対策推進法
過労死とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡。強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺。または、死亡には至らない脳血管疾患、心臓疾患、精神障害。
これらの未然の調査、啓発、相談体制の整備。
男女雇用機会均等法
職場のセクシャル・ハラスメント対策を義務化。セクシャル・ハラスメントとは、1.職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント)2.性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること(環境型セクシュアルハラスメント)。
これらの法によって、健全で充実した労働環境が保障される、ということになりますが、…現実は、もう少し複雑だと思われます。
ちなみに、法律制定を担う当事者である官僚などの国家公務員にこの法律は適応されません。
通称「タコ部屋」と呼ばれる一室に閉じ籠り、身を粉にして「お国のために尽くす」エリート達。
彼らのような高スペックな能力も、労働環境如何では活かしきれないと思います。
実際、国家公務員の離職率は、近年40%以上も増加しています。
もし、あなたが経営者だったら?
想像してみてください。
あなたは、苦労に苦労を重ねて起業した、汗と涙の経営者です。
やっと軌道に乗ることが出来たあなたの会社は、いよいよ従業員が50人を越えるようになりました。
そして、これからも気を引き締めて…という矢先、思わぬ問題が巻き起こりました。
様々なハラスメント被害の報告と訴えがあり、次々と退職者が出たのです。
事実確認を試みたものの、結局詳細は分からずじまいでした。
そして、起業時からの役員の一人が、これまでの責任を取って辞めていきました。すると、彼との信頼関係があった取引先との関係が悪化してしまったのです。
「〇〇さんだからこそ、頼んでいたんです」
「〇〇さんじゃなきゃ話になりません」
「ほかに詳しい方が居ないなら、申し訳ありませんが…」
売り上げは、徐々に右肩下がりとなりました。
リーダーのあなたは、寝る間を惜しんで奔走しました。
それでも、一度失った信頼はなかなか戻らず、眠れぬ夜が続き、気が付けば日中も動悸が激しくなっていました。
でも、弱音を吐く暇などありません。
『俺が何とかしなければ…。社員とその家族にも迷惑が掛かってしまう…』
そんな不穏な社内の空気の中、勤続年数の浅い社員があなたの元を訪れました。
「社長。このままではまずいです。現場は統率力を欠き、社のコンプライアンスを疑問視する声もあります」
『こいつは…』
彼は、海外を視野に入れた新規事業採用枠で入社した、某有名私大出身の早川です。
上役からの報告では、「理知的で頭脳明晰だが、知識過多で屁理屈が多いのが欠点。数名の管理職から扱いづらい人物」という意見が寄せられていました。
実際に、大風呂敷を広げる傾向がありながら、売り上げにはほとんど貢献していません。
辞めていった役員が言っていた言葉を思い出しました。
「彼は自分の主張を訴えるばかりで、組織というものを勘違いしている」
『あぁ…、採用をミスったか…』
「…わかった。君の意見は、今後の参考にさせてもらうよ」
すると早川が身を乗り出して言いました。
「当社は、未だ旧態依然とした体質なので、グローバルスタンダードに合わせた意識改革をしなければブラック企業だと言われても仕方がありません。では、定時ですので失礼します」
『‼』
責任は押し付けてくるが、仕事に対しては無責任。
貢献度は低くても権利だけは毅然と主張する。
『これも、俺の手腕が問われているのか…』
あなたなら、どうしますか?
つづく
※フィクションです。
記事を書いた人 Wrote this article
Kondo
短期間で改善を起こす、ブリーフ・サイコセラピー派の心理師。 あらゆる問題の解決事例を持ち、超合理的に結果に導く。 臨床から産業、教育分野まで、幅広い実践経験を持つ。 専門家からの相談を受けるマスター・カウンセラーである。